「AIとわたし ~デジタル時代を生き抜く基礎知識~」Girls Going Tech特別ワークショップ

わたしたちの活動#STEAM,#自己肯定感,SDG5,ジェンダー平等の実現,少女たちの声

ガールスカウト日本連盟では、これからのIT社会のなかでやりたいことに挑戦し自己実現できるようになるため、STEMに興味関心を持つ少女を増やすことを推進しています。2020年度マイクロン財団のご支援を得て、広島大学と連携し開催した「Girls Going Tech特別ワークショップ」を2021年度も3月20日(日)・21日(月・祝)の2日間にわたり実施しました。
今年のテーマは「AIとわたし ~デジタル時代を生き抜く基礎知識~」、最新のAI技術について53人の中学1・2年生のガールスカウトが学び、理解し自分たちの言葉でディスカッションをしました。

昨年の「Girls Going Tech」の様子
» 理系という選択肢は本当にハードルが高い!? GIRLS GOING TECH特別ワークショップを開催しました。

Day1

将来の道は自分で選ぼう ~理系を歩んできた私が伝えたいこと~

最初のセッションでは、マイクロンメモリ合同会社で技術者として働く池原 舞さんのお話を聞きました。
「女子は理数系が苦手」というイメージは固定観念であることや、池原さん自身が小学生のころから理数系が得意な女子だったこと。また、文系か理系かを判断できるクイズ、大学でなぜ「地学科」に進んだのか、マイクロンメモリに就職した理由などをお話しいただきました。

チャットを通じた質疑応答では、中学生たちから多くの質問があり、池原さんのお話から、自分自身の進路へのヒントをもらえたのではないでしょうか。

中学生たちの感想

  • 聞いたことがない学科がいくつかあり、驚きました。今まで知らなかったことをたくさん知る機会があり参加してよかったです。
  • 理系には、シンプルに考えられる、データを解析・分析できる、数字から物事を考えることが得意などの特徴があるということや、理系女子がいないと、女性にとって暮らしにくい社会になってしまうということがあるということがわかりました。また、理系の考え方で、トライ&エラーや探求心・好奇心が強いということや、経験が武器になる!という考えかたがあることがわかり、「完璧なんて敵」ということが、心に残りました。
  • エンジニアとしてモノづくりの場面の中に女性の視点も必要であることを今回の講義で知りました。

Girlsアイデアソン:ゴールに至るベストな方法を柔軟に考える

アイデアソンとは、アイデア(Idea)とマラソン(Marathon)を掛け合わせて造られた造語で、特定のテーマについてグループごとにアイデアを出し合うものです。

広島大学の川田和男准教授(以下、川田先生)から進め方の説明を聞き、13のグループに分かれブレイクアウトルームへ移動しました。グループには広島大学の学生の皆さんがメンターとして入り、「未来の学校を楽しくする・便利にするものを考えよう」をテーマに自由に意見を出し合いました。
ブレイクアウトルームでまとめたアイデアをそれぞれのチームから発表をしてもらいました。

中学生たちのアイデア例

  • センサーを使って卓球ボールを見つける。
  • 守衛さんが大変なので、校門の開け閉めの自動化。
  • 各教室の音量を計測し、校内放送の音量ばらつきをAIで解消する。
  • 車いすの人のサポートを周りに自動で知らせる。
  • 光の強さ、太陽の角度で黒板やスクリーンが自動で角度を調節させるようにする。

川田先生の講評

学校で学んだ「太陽の角度」など知識を応用していることや、放送の音量を計測しアクションへつなげるなど、理系的によく考えられていた。仕掛け学という、人の心を動かすという要素が入っているアイデアも素晴らしかった。普段から生活しているうえで、世の中が良くなるように問題を解決していく考え方を身に付けていってほしい。

Day2

特徴からなんの動物か当ててみよう

2日目は動物当てゲームからスタート。1回目のブレイクアウトルームで、グループの半分はネコの特徴を考え、また、半分はブタの特徴を考えます。2回目のブレイクアウトルームでは、違う動物の特徴を考えたグループでペアになり、互いの動物を言い当てました。

中学生たちがランダムに出した特徴を大学生メンターが分類立ててくれました。
大きな特徴からスタートし、当て合います。どのチームも4~5個のヒントですぐに正解していました。

人間は高度な処理をおこなっている

ブレイクアウトルームのあとは、AIについての川田先生の講義です。先ほどおこなったゲームを従来のコンピュータが答えるとしたらという例から最近のAIの場合はどのように判断するのかをわかりやすく説明してくださいました 。

人間は物事の判断の際、高度な処理をおこなっていて、AIではできないことも多いとのこと。では、それをどうやって人口知能(AI)に判断させていくのか、機械学習とは何かなど専門的な説明がありました。AIを搭載したロボットに歩行訓練で強化学習させ、スムーズに歩けるようになる過程のビデオも視聴しました。
セッションの最後には中学生からの質問もあり、みんな、興味津々で講義を受けている様子が伝わってきました。

中学生からの質問

質問:これからの将来AIに期待していることはなんですか?
回答:日本は災害が多いので、被災地域の生存者を早く見つけることやがん細胞を早く見つけるなどの、人を支援するようなものが期待されている。

質問:医療現場など人の命がかかわる現場でのAI使用では安全性はどのように考えられているのでしょうか。
回答:現在の状況では、安全性を担保するために最終的に人間が判断する必要がある。世界的にデータをオープンにし、より多くのデータを共有し判断材料を増やさないとAIだけに任せることは難しいです。

顔認証アプリを使ってみよう

顔認証アプリを使ってみて、AIはどこで見分けているのか考えてみるワークショップをおこないました。アプリにイラストやぬいぐるみなどを写して読み込ませてみたり、自分の顔を部分的に隠してみたり、AIの判断基準を考えます。

» 使用したアプリ:face-api.js playground Webcam Face Tracking

スマートフォンに描いた顔も認証されました。

二つ目のアプリは、二つの写真を比較し、同一人物なのかどうかを判断します。AIは二つの写真をどのように判断しているのかをブレイクアウトルームに分かれてグループで話し合いました。
「同じ人で眼鏡をしているのとしていないのもちゃんと同一人物として判断している!」
「男女はどうやって見分けているのだろう」
「斜めからの写真だと同じ人物でも違うと判断しているよ」
いろいろな組み合わせの結果を見ながら、さまざまな意見が飛び出しました。

» 使用したアプリ:face-api.js playground BBT Face Similarity

三つ目のアプリでは、登録されている顔写真を塗りつぶすことで、人間の顔として認識されなくなるかを試しました。このグループワークを通じて、AIをどうしたら騙せるのかを考えました。眼鏡を描いたり、マスクを描いたり、輪郭を消してみたりしました。

» 使用したアプリ:Erase Your Face

グループワークを通じて

AIがどんなところを判断して、人間の顔として判断しているのかをチャットにみんなが書いてもらいました。顔のパーツや輪郭などと意見がありました。実際にAIは、パーツと輪郭、配置を総合的に判断しているそう。一部でも見えればAIを騙すことが難しいとわかりました。しかし、プログラマーの学習のさせ方が影響していて、角度によってわからない場合があるなど、得意不得意があるということもわかりました。現在、顔認証システムは、空港のセキュリティや警察が人探しに使うなどで活用されています。

倫理について話し合ってみよう

社会へのプラスとマイナスの影響はどんなものがあるか。
AIを用いた監視は正当化されるのか?
AIを用いた監視は優れているのか?理由は?
顔認識はほかにどのような場面で役立つか?

一部では、決まった思想や人種の人を排除することにも利用されてしまっているなど社会問題にもなっているAIの顔認証システムについて、実際の社会に導入されていく中でどのようなことを考えておくべきかをブレイクアウトルームに分かれグループ討論しました。大学生メンターのみなさんにまとめてもらい各グループから意見を発表してもらいました。

プラスとマイナスの影響では、便利になることと、不便になることは表裏一体であることへの気付きがありました。監視の正当化については、なにが正しく、なにが正しくないのかのルールや線引きや本人が了承しているかどうかが大事という意見などが出ました。AIを用いた監視の優れている点では、人間よりもミスが減るのでは?や私情を挟まないのでよいのではないかといった意見がありました。それぞれ、グループごとにとても多くの意見が活発に出されていました。

2日間のワークショップから得たもの

川田先生からとても多くの意見が出ていることや目の付け所の良さを評価していただきました。
「技術者は世の中が便利になるようにと考えて設計しているが、設計によってかえって不便になることや、悪用されることがあるということを知ってほしい。今回のワークショップがきっかけとなり、作る側の視線を持って、よいことに使われているか悪いことに使われているかを判断できるようになることがとても大切だと思います。」と言葉をいただきました。

中学生の感想

体験したことで便利なところもあって、不便な部分もあるということを知りました。これから、AIを使用する場面が増えてくると思うのでワークショップで学んだことを踏まえ使いこなしていきたいと思います。


今回のワークショップに参加した少女たちが、テクノロジー技術は身近な日常の中にあることや、テクノロジーを使うことは生活の中で課題解決方であることなどを学び、理系という選択が少女にとってハードルの高いものではなくなり、将来への選択肢が増えることを期待しています。 ガールスカウトでは、これからも少女がさまざまな力を伸ばすことができる機会を提供していきます。

参考資料:令和2年版 男女共同参画白書 (概要)令和2年7月 内閣府男女共同参画局