Chip Camp in 東京 2023 開催報告

わたしたちの活動#STEAM,#体験活動,SDG5,ジェンダー平等の実現,ロールモデル,少女たちの声

2023年12月26日~28日に、Chip Camp in 東京を開催しました。全国から47人の中学生ガールスカウトが参加しました。

Chip Campとは

米国の大手半導体メーカーマイクロンテクノロジー社が設立したマイクロン財団が実施している、小中高校生を対象とした半導体とエンジニアリングの仕事に関する実践的な STEM教育プログラムです。
ガールスカウト日本連盟は広島大学と東京工業大学のご協力を得て、中学生を対象に開催しています。

Day1

米国マイクロン社CEOのビデオメッセージで開会!
コロナ禍は集う経験が少なかった参加者たち。久しぶりの宿泊型のイベントに、緊張や、わくわくが伝わってきます。

マイクロンCEO

Session1 半導体について知ろう 粘土でウェハを作ろう

マイクロンメモリ ジャパン社では、マイクロンの最先端半導体メモリの開発・製造をおこなっています。始めにマイクロン広島工場 金子幸治ディレクターより、半導体について講義を受けました。日本の強みとは、より美しく、より精度高く製品の完成度を高めること。日本のチームがハイクオリティを目指す粘り強さは世界一です。そんな日本のモノづくりのすごさを伝えるお話に聞き入りました。

開会

次に、講義で学んだ半導体の製造工程を実感するために、シリコンウェハに見立てたプラスチック板と粘土を使って、実際にプロトタイプを作成しました。手を動かす作業は楽しく、自然に参加者どうし打ち解けていきます。こうして皆で協力し、楽しみながら手作りの半導体が完成しました! 自分たちの日常に欠かすことができない、便利でさまざまな製品に入っているものを、自分の手で作る体験はとても感動的でした。

Session2 アイデアソンタイム

2つ目のセッションではアイデアを競うアイデアソンを実施。「ガールズ・アイデアソン ゴールに至る方法を柔軟に考える」と題して、広島大学の鈴木裕之准教授に、課題発見から解決までのアイデアのまとめ方を学びました。
“自分たちの身の回りには、どんな「解決したい課題」があるのか?“
”その課題を解決するためには、どんな技術があるのか?”
”例えばコンピュータは、人間のどんな動作を代わりにやってくれるのか?”
参加者は最初に一人で課題を考え、次にグループに分かれてそれぞれのアイデアを持ち寄り、精度を高めていきました。皆で話し合うことで、解決への道が開けたり、新しい発見に繋がったりしました。
このワークショップによって、参加者は重要な気づきを得ることができました。それは、「対話をすることでアイデアが発展する」ということです。研究においても、開発においても、一人で成しえることには限界がある。皆で協力して取り組む強いチームワークが、より大きなイノベーションをもたらすという核心に触れたのです。

Day2

Session3 0と1 コンピュータの世界

2進法を学ぶ参加者

翌2日目の最初のセッションは、コンピュータの世界を構成する二進数について学びました。二進数とは、コンピュータが情報を処理するために使う基本的な数値表現であり、0と1ですべての数字を数えるルールです。最初に、この二進数について、広島大学の川田和男教授より講義を受けました。
講義を聞きながら、0と1はスイッチの「ON」と「OFF」の2択に対応することから、電気製品と相性が良いことが分かってきます。次はいよいよ実践です。
「それではみんなで人間計算機になってみましょう!」前日の夜に広島大学川田教授と学生がフロアに準備した論理演算回路の上に参加者が立ち、0と1のカードを持って自分の役割を担います。回路の分岐点には「AND」「OR」「NOT」の3つの条件が設置されており、一人一人が自分に割り当てられた条件を実行します。
入力で大学生が数字を言うと、計算機は一列目からパタパタパタと0/1カードをめくり、次の人に見せます。それを見た人は自分の条件に従ってカードを表示し次の人に見せます。最後に3桁のマスにそれぞれ0か1の数字が入って、計算結果が導き出されるというわけです。
一人一人が条件を理解していれば、あとは0か1の自分の結果を表示するだけ。シンプルなのですが、集団でやっていると人間はどうしても混乱してしまいます。
回を重ねるうちに、1チーム約15人で構成される計算機がスピードアップしてゆきます。隣の計算機の効率化を見たり、ブラッシュアップをしながら、最後は、最速のチームが4秒で計算結果をだすことができました! まさに人間計算機として計算機の論理回路を体験できる、大変学びの多いワークショップとなりました。

キャリア講演会

「理系女性のキャリアについて」
九州大学 湯浅裕美教授、マイクロン エンジニア 新川美迪氏

多くのメディアで報道されている通り、日本では理工系分野でキャリアを構築する女性はたいへん少数派となっています。今回は特別に、女性ロールモデルからお話を聞く機会を設定しました。最初に、九州大学で最先端半導体技術の研究をされている湯浅先生より、研究内容からキャリアについてお話を聞きました。研究のテーマがグローバルのトレンドとなって盛り上がる醍醐味や、仲間と強いチームワークで研究を続けること、また、博士号の取得のタイミングなど、理系キャリアの夢やロマン、実践のアドバイスをいただきました。

キャリア教育講演の様子

キャリア教育講演の様子

マイクロンの新川エンジニアは、マイクロンの典型的な仕事の一日について触れ、チームのエンジニアやメーカーとのコミュニケーションなどについて、エンジニアとして実際に働くことをイメージできる多くのアイデアを紹介していただきました。デザイン力やコミュニケーション力など、今すぐに役立つスキルのエッセンスを教えていただき、参加者たちも、憧れの先輩に胸がときめいた時間となりました。

Session4 ラズベリーパイで ぶつからない車を動かしてみよう

次に、いよいよ本格的なプログラミングをおこなうワークショップの時間となりました。
何度プログラムを書き直してもエラーが出てしまい焦るチーム、無事エラーをクリアしてロボットにプログラムを搭載するチームなど、作業の難しさに葛藤しながらも、皆でゴールを目指します。最終的に、センサーが作動し、無事車を制御できた瞬間は感動的でした!
さらに、川田先生から「プログラムの文字を一つ、逆向きにしたらどうなる?」という追加の課題が提示されます。結果は・・・人感センサーが作動すると、車が発進し、体で止めてもそれに反応して進み続ける車になってしまいました。「ぶつからない車」作りで、参加者は、プログラミングの仕組みと、たった一文字で意図と真逆の動きをしてしまうハッキングの恐ろしさを学ぶことができました。

プログラミングを学ぶ参加者

プログラミングを学ぶ参加者

プログラミングを学ぶ参加者

Session5 アイデアソンタイム マインドマップでふりかえり・バッジ授与式

夕食後は、一日目に続き、アイデアソンでアイデアを発展させました。2日目のアイデアソンでは、プログラミングやロボット制作といったモノづくりから学んだ技術の知識を応用して、アイデアがより現実的になってきました。椅子や窓、センサーで動く身近なモノを使って人間の暮らしを快適にしたり、ヒューマンエラーを補完したり、まさにIoTにつながるアイデアが発案され、鈴木先生が最後のまとめとして各チームの発表を講評しました。

アイデアソンに参加

アイデアソンに参加

最後に、鈴木先生よりSTEAMについてのお話しがありました。ARTとTECHの違いについて、芸術は内発的、技術は外発的であるが、この二つの要素が揃うことで、大きなイノベーションに繋がると学びました。

2日間にわたるバッジプログラムが無事修了し、全員に修了証とChipCampバッジが授与されました。

STEMの講義

修了証授与

Day3

Session6 東京工業大学キャンパスツアー 波多野睦子教授、平井秀一郎教授、山田明教授

3日目も晴天に恵まれ、朝早くからバスで東京工業大学 大岡山キャンパスへ向かいました。
到着後は、太陽光発電パネルが壁面に装備された環境エネルギーイノベーション棟にて、波多野教授「ダイヤモンド量子センサで人の頭の中を読み取る!」、平井教授「燃料電池で世界が変わる!」、山田教授「太陽光発電と環境エネルギー棟」のテーマで、3つの研究室を見学しました。ダイヤモンド量子やCO2の海洋隔離、太陽光エネルギーといった、最先端の研究に次々と触れることができて、参加者のワクワクは止まりません! それぞれの研究室で、参加者たちは積極的に質問をして、教授に解説していただきました。

東京工業大学見学

東京工業大学見学

東京工業大学見学

Session7「Rickshawロボットを作る!」

昼食後は会場をラボに移し、人力車を基にしたロボットを制作し走行レースでタイムを競うワークショップに参加しました。

ロボット作り

ロボット作り

ロボット競争

最初に、岩附信行副学長より、ロボット工学の基本について講義を受けました。人間の動作をロボットで再現するには、数学の知識が役立ちます。日頃学校で受けている数学の授業は、将来おもしろいロボット作りの研究に発展するかもしれない! と思うと、参加者もこれから、数学の授業が楽しみになるのではないでしょうか。

講義の後は Rickshaw作りです。Rickshawの部品には、組み立ての時にパーツを接合するための穴が複数あります。どの穴を使って結合するかで、最終的にロボットの動きが変わる仕組みです。速く走るために考えながらパーツを組み立てますが、いざできあがったロボットを走らせてみると、イメージしたように動きません。「より早く、左右対称に安定して前進するには、どの角度で結合するのが良いのだろう?」 と、参加者は設計にまい進します。
完成した力作を手に、参加者はレース場へ。「33秒!」「21秒!」「16秒」「52秒! あれ!?」改善したはずなのにタイムが落ちることも。なぜだろう? 参加者は席にもどり、ロボットの調整をします。集中して取り組んだ結果、最短タイムは11秒を記録し、表彰式では優勝者に工夫したところを発表してもらいました。

最後に、3日目を取りまとめていただいた岩附副学長から「工学は女子大歓迎です!」のと、嬉しいお言葉をいただきました。また本プログラムをご支援いただいているマイクロン財団の堤氏から総評をいただき、Chip Camp in 東京は大盛況のうちに幕を閉じました。
半導体と工学の基礎知識や、最先端技術で社会に貢献できることなど、STEAMの本質的な魅力を体験し、大変充実した3日間となりました。

ロボット競争

参加者の声

Q プログラムの感想

  • 話を聞くだけでなく実際にものづくりをして体験することで頭に入りやすく楽しさを感じました。
  • 講義だけでなく、技術やICT分野で活躍する、広島大学の大学生の方や女性エンジニアの方々、東京工業大学の研究室の方々から話を聞けたことがとても良かった。学校では教えてくれない、本場の人たちの話が聞けて貴重な体験ができた。
  • 自分は理系がそこまで好きでは無いから自分からロボットを作ったりはしたことがないけれど、今回ロボットを作ったり、半導体について知ることができたからすごく嬉しかったです。

ロボット作り

ロボット競争

Q 一番印象に残っていること

  • センサーで止まる車を作って実際動かしたとき、自分でも作れるんだなと感動しました。
  • 女性エンジニアの方々の生き方や仕事について聞いたことです。自分の夢や目標に向かって、チャレンジし続ける姿に刺激を受けました。
  • Raspberry Pie の配線を入れる所が初めての体験で楽しかったです。
  • ダイヤモンド研究の話を聞いたこと
  • 0と1 コンピュータの世界です。自分たちで2進数の計算機となってみんなで協力して早く計算するのがとても印象に残りました。NOT演算子、AND演算子、OR演算子の3つを使って計算することを初めて知り、みんなでたくさん練習をしました。おかげでとても早く計算をすることが出来て協力ってすごいなって思いました。
  • 広島大学の方たちに教えてもらいながら、自動で止まる車を作ったり、プログラミングを学んだりしたことで理科や技術がさらに好きになった。

Q 女性エンジニアの話で印象的だったこと

  • 九州大学の湯浅先生のお話から、研究室の女性の割合は3〜4割と、思っていたより少なかったことと、マイクロンの新川様のお話で改善する事は変化であると言う考えであることに驚いた。
  • 仕事で思っていたよりも会議をしていたこと。コミュニケーションが大切なこと。
  • 湯浅教授のお話から「失敗しても終わりではない」「お金と人が集まるとおもしろい」「ドクターは早めに取る」ことを学びました。
    新川美迪さんのお話から「気になることは調べることで視野が広がる。」「チームリーダーとして信頼関係を築くにはコミュニケーションとフィードバックの循環が大切」といったことを学びました。
  • 関係の質、思考の質、行動の質、結果の質の好循環

Q 勉強したいこと、仕事にしたいことなど、夢

  • 将来の夢は医者だから、東工大でロボットを作ったように新しい医療機器などを作ってみたいと思うようになった。
  • ピンクダイヤモンドの量子センサや二酸化炭素の削減方法を詳しく勉強したいです。
  • ラズベリーパイについてもっとたくさん知りたいと思いました。
  • 考えを深く追求できる仕事をしたいです。
  • 今はまだ夢はわかりませんが、このキャンプを通して工学の道もいいな、と感じました。人の役に立てる仕事をしたいです。
  • 世界の状況を少しでも良くできるような仕事に就きたい。

2024年度は、4月にChip Camp in 広島、夏は小学生を対象にしたGirls going tech、12月にChip Camp in 東京を開催する予定です。
ぜひガールスカウトで体験してみませんか。